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「なにがよ」
『私では貴女を支えられませんか』
実体を持った手が優しく咲羅の手を包み込んだ。
『貴女を愛しています』
咲羅は目を丸くした。
ほんの少し前に会ったばかりの、しかも人ではない男に、告白されるなんて思ってもみなかったからだ。
『貴女をみるのはあれがはじめてではなかったのです』
桜呂はそう言って微笑んだ。
あれ、とは咲羅が振られた日のことを指すのだろう。
「はじめてじゃないって…?」
『前にも何度か彼処で泣いたことがあるでしょう?私はそのときに貴女をみたのです』
咲羅の頭に優しくふれていく。
桜呂は柔らかな笑みを浮かべて咲羅を見つめていた。
その優しい瞳に咲羅の驚いた顔が映っていた。
『私は貴女を知っていました』
「いつから…?」
『十年前…貴女のお父様が亡くなったときから』
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