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「パパー!」
「おぉ、咲羅。かわいいな」
小学一年生になった当時、咲羅は父とともに丘の上の桜の木のそばにいた。
入学祝いとして買ってもらったピンク色のワンピースを着て、満開の桜の元で写真を撮るためだ。
「咲羅はパパの自慢の娘だぞ」
そう言って頭をなでてくれる大きな手が大好きだった。
豪快な笑い…少しだけそり残された髭…無骨ながらも器用な指…子供のような無邪気な笑み…
咲羅が自慢できる優しい父だった。
「咲羅もパパが好きー!」
「そうかそうか…はぁ、かわいい…」
「パパ、おひげがじょりじょりするー」
無邪気に笑いあう。
やがて母と弟がきて家族写真を撮った。
そのわずか三日後、父は列車事故に巻き込まれて帰らぬ人となったのだ。
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