蕾つき、花開き

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『貴女はあのとき私がいた木のそばで泣いた…私はそのときに目覚めたのです』 信じられなかった。 確かに咲羅は父親が死んだと聞かされた日、丘の上の桜の元で泣いた。 『……私ではだめですか』 「だめ…?」 『私では貴女の寂しさを埋めることはできませんか』 桜呂は咲羅を心配しているのだ。 咲羅は首を振った。 「そばに…いて」 『この命尽きるまで…』 桜呂はかすかに微笑んだ。 咲羅は恥ずかしくなって顔を背ける。 今になって気づいたのだが、桜呂はかなりの美形なのだ。 透き通るような白い肌に整った鼻梁、薄紅の唇と淡い空色の瞳… 咲羅は自分の顔が熱くなるのを感じた。 「桜呂…抱きしめて…」 そう甘えるように言えば、桜呂は包み込むように咲羅を抱きしめた。 優しい桜の香りが咲羅を取り巻いた。 「『愛してる』」 二人の言葉が重なり、目を丸くしながら視線をあわせた二人は笑いあう。 ゆっくりと二人の唇が重なった。
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