5人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
「別れてほしい」
なにを言われたのかわからなかった。
しかし、彼のまじめな顔は咲羅をからかっているようには見えなかった。
「…咲羅のことは確かに好きだ。でも、それ以上に大切なやつができたんだ」
ひどい…二股?
口ではどうとでも言える。
好きじゃないならどうしてつきあったの?
咲羅は言いたいことがいろいろあった。
でもこらえた。
泣いたって仕方がない。
「そっか…」
「ごめんな…なにかあったら相談に乗ってやるからさ」
「うん…」
咲羅をその場に残して彼はそこを去った。
咲羅はただ呆然と空を見上げることしかできなかった。
恋が叶うと言われていた桜の木の下で、告白し付き合って、そして…振られた。
「バカみたい…」
なにを期待したんだろう。
滅多に会えない彼からの呼び出し、しかも丘の上の桜の下だ。
誰でも期待するだろう…
咲羅の瞳から涙がこぼれた。
頬を伝い、地面に落ちて消えていく。
「ふぇ…っ」
咲羅は木の根本にしゃがみ込み腕に顔を埋め泣き始めた。
『泣いておられるのですか』
最初のコメントを投稿しよう!