花散り、蕾つき

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「別れてほしい」 なにを言われたのかわからなかった。 しかし、彼のまじめな顔は咲羅をからかっているようには見えなかった。 「…咲羅のことは確かに好きだ。でも、それ以上に大切なやつができたんだ」 ひどい…二股? 口ではどうとでも言える。 好きじゃないならどうしてつきあったの? 咲羅は言いたいことがいろいろあった。 でもこらえた。 泣いたって仕方がない。 「そっか…」 「ごめんな…なにかあったら相談に乗ってやるからさ」 「うん…」 咲羅をその場に残して彼はそこを去った。 咲羅はただ呆然と空を見上げることしかできなかった。 恋が叶うと言われていた桜の木の下で、告白し付き合って、そして…振られた。 「バカみたい…」 なにを期待したんだろう。 滅多に会えない彼からの呼び出し、しかも丘の上の桜の下だ。 誰でも期待するだろう… 咲羅の瞳から涙がこぼれた。 頬を伝い、地面に落ちて消えていく。 「ふぇ…っ」 咲羅は木の根本にしゃがみ込み腕に顔を埋め泣き始めた。 『泣いておられるのですか』
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