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『大変じゃぁぁぁぁ!!』
とある晴れた日の朝、学校に行く支度をしていた咲羅の耳にそんな叫びが聞こえてきた。
縛っていたネクタイを床に落とし咲羅が振り向けば、なんの精霊なのかわからないが、一人老人が部屋の窓をバンバンと叩いている。
「な、なに!?」
『桜の精が大変じゃぁぁぁっ』
老人の言葉に咲羅ははっとして母親の制止も聞かず外に飛び出していった。
咲羅が外に出たことに気づいた老人は咲羅のそばを浮遊する。
『昨夜から様子は変じゃったんじゃ。今朝様子を見に行ったら桜の木が……』
老人の言葉も耳には届かない。
ただひたすら思うのは桜呂の安否だけである。
心臓が痛いほど早くなる。
どうか無事でいて、ただその思いだけが咲羅を支配していた。
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