花散り、蕾つき

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ふと聞こえてきた声に咲羅は顔をあげた。 誰もいない。 「おかしくなったのかな…幻聴が聞こえるよ」 咲羅は耳をいじりつぶやいた。 『幻聴ではありませんよ』 再度声が聞こえた。 しかも咲羅のすぐ近く、そう背後からだ。 『泣くようなことがおありですか』 優しく響く声だ。 咲羅は恐怖など感じなかった。 ゆっくり振り向いて、そして目を見開く。 そこには木の幹から上半身をはやした青年の姿があった。 「っ?!」 『驚かれましたね』 青年はくすくすと笑いながら幹から滑り出てくる。 思ったよりも咲羅より身長が高かった。 「な…あ、あんた何者?」 『あんたとは失礼ですね。せめてあなた、にしてください』 青年は少し不満そうにつぶやいた。 咲羅は青年が何者なのか想像もつかずにいた。
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