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青年の言葉に咲羅は顔をむけた。
咲羅の疑問を感じたか青年は笑うと話し始めた。
『私たち精霊は自分たちが宿るものの中で眠っているのがふつうなのですよ』
「あなたが私の声で起きたってことは私の声は目覚まし代わりだったの?」
咲羅のとげとげしい言葉に青年はくすりと笑みをこぼした。
ゆっくりと首をふり咲羅の言葉を否定する。
『こんなこと言ったら貴女は怒るでしょうが』
青年はそう前置きすると微笑みを浮かべて咲羅をみた。
『貴女の声は周りの精霊たちを眠りから目覚めさせることができるようなのです』
咲羅は目を見開いた。
青年の言葉が信じられなかったわけではない。
…その逆だったのだ。
『桜の主よ、その少女が我らを呼び覚ましたのか』
『まだ幼いのね』
様々な格好をしたもの達が咲羅の周りを取り囲んだのだ。
どうやら精霊たちは老若男女問わず様々な姿をした者がいるらしい。
サイズまで様々だ。
今咲羅の右肩には薄茶色の衣を着た子供がちょこんと座っているし、咲羅を観察しているのか白い衣を着た老人がふよふよと漂っている。
『声で目覚めたのは初めてですね』
桜の木の青年がそうつぶやいた。
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