花散り、蕾つき

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『逃げられてしまった…』 青年は小さくつぶやくと口元に小さな笑みを浮かべた。 『でも、逃がしはしない』 青年はそうつぶやくと姿を消した。 一方咲羅は家に戻った。 扉の開く音が聞こえ、弟の翔がリビングから顔をだす。 「おかえり、早かったな…って、どうした」 翔は咲羅の顔に残る涙の後に気づいた。 咲羅は何でもない、と首を振り二階にある部屋へと上がっていった。 翔はその姿を見送りながら、何かに目を奪われかがみこむ。 「桜の花びら?」 手に取ったのは薄紅色のハート型をした花びらだった。 「姉貴…なにがあったんだよ」 心配そうにつぶやいた翔だが、頭をかくとリビングに戻った。 .
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