5人が本棚に入れています
本棚に追加
ベッドに横たわれば、咲羅は枕に顔を埋めた。
先ほど出てこなかった涙が今になって出てくる。
ぐすっと鼻を鳴らして咲羅は頭から毛布をかぶった。
「はぁ…もうだめだわ」
小さなつぶやきがこぼれた。
枕から顔をあげた咲羅の顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっている。
「お風呂入ろう」
パジャマと下着、タオルを持って階下に向かう。
リビングの前に行けば母親が顔を出した。
「咲羅、ご飯だけど?」
「お風呂入ってからでいい」
咲羅は風呂場にむかう。
洗面所にある鏡をのぞき込めば、泣きはらした顔が映る。
咲羅は自嘲気味な笑みをこぼした。
手っ取り早く服を脱ぎ、湯気で白く濁る浴室に入った。
体と髪を洗い終え、湯船につかれば全身から力が抜けていく。
咲羅はそれで自分が力んでいたのか知った。
口元まで湯につかればぼぉっとする頭で今日のことを思い出す。
別れた彼、木の幹から出てきた青年、精霊と呼ばれる存在…
咲羅はそこまで考えて逆上せそうになり、湯船からあがった。
ぬるめのシャワーを浴びて浴室をでればバスローブを羽織体を拭く。
『見つけましたよ』
そんな声が聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!