5人が本棚に入れています
本棚に追加
その声が聞こえた瞬間咲羅はぎょっとした。
間違いなく先ほど聞いた声だ。
「早く寝よう…」
咲羅はさっさと着替えると夕食はいらないと言って部屋に戻った。
『遅かったですね』
咲羅の思考は一時中断する。
ベッドの上の青年は端正な顔に笑みを浮かべて咲羅をみた。
『探すのに手間取りましたが、あなたを見つけられましたね』
「そこは私のベッド。そこからさっさとどいてくれない?」
咲羅は青年をにらみつける。
対する青年はにこっと微笑んだまま咲羅を見つめている。
「さっさとどきなさいよ」
『私は貴女に名をつけてもらいたいのです』
何を言っているんだという目で咲羅は青年を見つめた。
『私は名がほしいのです。唯一無二の名が…』
青年はどこか一生懸命だった。
咲羅は軽いため息をこぼす。
そばにあったいすに腰掛ければ足を組んで青年を見る。
青年は期待に満ちた瞳で咲羅を見つめた。
「……桜呂」
咲羅がつぶやけば青年の顔が輝いた。
『ありがとうございますっ!』
最初のコメントを投稿しよう!