花散り、蕾つき

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その声が聞こえた瞬間咲羅はぎょっとした。 間違いなく先ほど聞いた声だ。 「早く寝よう…」 咲羅はさっさと着替えると夕食はいらないと言って部屋に戻った。 『遅かったですね』 咲羅の思考は一時中断する。 ベッドの上の青年は端正な顔に笑みを浮かべて咲羅をみた。 『探すのに手間取りましたが、あなたを見つけられましたね』 「そこは私のベッド。そこからさっさとどいてくれない?」 咲羅は青年をにらみつける。 対する青年はにこっと微笑んだまま咲羅を見つめている。 「さっさとどきなさいよ」 『私は貴女に名をつけてもらいたいのです』 何を言っているんだという目で咲羅は青年を見つめた。 『私は名がほしいのです。唯一無二の名が…』 青年はどこか一生懸命だった。 咲羅は軽いため息をこぼす。 そばにあったいすに腰掛ければ足を組んで青年を見る。 青年は期待に満ちた瞳で咲羅を見つめた。 「……桜呂」 咲羅がつぶやけば青年の顔が輝いた。 『ありがとうございますっ!』
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