1/6
前へ
/60ページ
次へ

今年も咲いた。庭先の小さな桜の木。私はゆっくり深呼吸する。太陽の匂い。甘い桜の匂い。おじいちゃんが買ってきてくれた甘酒がとろとろ喉を流れる。 この頃になると私の町ではお祭りやっていて、私は桜が咲くと決まっておばあちゃんと近所の山の上まで桜を見に行って、帰りにお祭りでイカヤキを食べた。 でも今年は、私はおじいちゃんの焼く、ピンク色の掻き餅を食べている。香ばしくて、ほんのり甘い。 おばあちゃんは、今どき珍しく毎日着物を着ていた。だからおじいちゃんがこうやって七輪で掻き餅を焼いたり、魚を焼いたりすると匂いが付くと嫌がっていたけど、イカヤキの時は、私も、と言って庭までお茶を持ってきた。もっともおばあちゃんがイカヤキを食べる事はそんなになくて、私と桜を見に行く時も、いつも洋服だったけど。 桜がひとひらちぎれる。 私はおばあちゃんを思い出した。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加