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そこには口の上から左右1本太い毛が生え、頬にはエメラルドグリーンの鱗ができているリュウセイが映っていた。
「なんだよこれ……き、気持ちわりぃ……」
「バカ!! 運転中よそ見するな!!」
リュウセイはよそ見をし、横断歩道を突っ切ろうとした。しかしそこをガラの悪い大人が歩いていた。
キキィー ……
リュウセイはとっさにブレーキを踏んだ。
…………
「なぁ、早くその体戻さないと大変なことになるぜ」
ノムはリュウセイに静かに言った。
ブレーキを踏む時に力が入り、リュウセイの体はまるであの伝説の生物“龍”のような姿になって、ワゴン車に隙間がないほどぎっしりとつまってしまった。
「おいリュウセイ! 引かれかけた男が近づいてきたぞ! やべぇ、どうすんだ!?」
「状況が把握できねぇ! なんだこれ!? どうすりゃ戻るんだよ! ちょ、来た! やべっ」
リュウセイは目をつむった。そっと力を抜いて……
「やいやいやい!! 何してんだよあんちゃん。俺が見えなかったか?」
ガラの悪い男はズボンのポケットに手を突っ込み、運転席のガラスにデコを押し付け文句を言っている。だがリュウセイの姿を見ても驚くことなく文句を言う男に、リュウセイの目は点になった。
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