1.連続発砲事件

6/12
前へ
/107ページ
次へ
「なんで? なんでビビらないの? この姿見て……」  リュウセイはバックミラーを見た。だがそこに映っていたのはいつものリュウセイ。  少しの間沈黙が続いた。 「スイマセンでしたー!」  リュウセイはとりあえず大声で男に誤り、ワゴン車を急発進させた。  男は走って追いかけてきたが、しばらくすると、ワゴン車の速さに追跡を諦めた。  するとすぐにリュウセイの住むアパートに到着した。  リュウセイは辺りに人がいないことを確認すると、ノムを抱えてダッシュでアパートへと駆け込んだ。  部屋の中、棚の上やタンスの中がきっちりと整理されていて、まるで一人暮らしをしている男の部屋とは思えないほどだ。 「おぉ、またこの視界からみるお前の部屋は別世界だなぁ!!」  ノムは満面の笑みで、小さな足を器用に動かし、リュウセイの部屋を駆け回っている。ふと上を見上げると、額に入った1枚の賞状がノムの目に入った。 「なぁ、お前賞状なんか持ってたのか? なんの賞状だ?」 「あれは、18年間大きな風邪をしなかった、っつう賞状。それ以外にはなんもねぇ。 確かルーフももらったって言ってたなぁ」  リュウセイは椅子に腰掛け、コーヒーを一杯マグカップに注ぎ、オレンジジュースをペットボトルの蓋に注いだ。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加