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現世である陽国へ出てすぐ、いきなり大量の石の飛礫が降りかかってきた。
「つわぁっ!なんだよっ!」
「にゃっ」
静かすぎる住宅街の昼下がり。雪原邸の門前の小道で暁と希沙夜はわたわたしていた。
覆い被さって黒猫を庇う少年へ、さらに大量の飛礫の雨が降りかかろうとした瞬間、ピンクの光が空間を遮って輝く。
「おい!ガキども!こっちだ!」
「奥田さん?」
メガネでひょろ長いスタイルのオタクっぽい青年が、せわしなく手招きしてきた。呪禁師のひとり、奥田伴内である。
ピンクの光は傘型となり、暁と希沙夜へさしかけてられていた。
「ありがとうっす!」
戸惑う黒猫を制服の懐へ投げ込み、暁は飛礫の雨の圏外へ走り出した。
「大丈夫かぁ?」
「助かった~!なんすか?あれ」
「あれがオレら年季の入ったカガセオまで病院送りにしてくれた、家鳴り……ひらったくゆーとポルターガイストだ」
「ってか、全っ然ひらったくねー!専門用語~!」
奥田が乗り付けてきたらしい銀のワゴン車の中で、いまだ降りしきる飛礫の雨を見やる。
「要するに家にとっついて悪さする妖怪だよ。フツーはもうちょい、地味な軋みとか家財が跳ねる程度なんだけど、あれはハンパねえ」
「大変だったんすね」
落ち着いてメガネ青年を観察すると、彼の服の下は包帯や湿布だらけであった。
そんな折り、黒猫が暁の胸からのそのそと這い出して、シートに放り出されたままの奥田のノートパソコンの元へゆく。
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