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「ヒマラヤシーダーって常緑樹らしい。ひなたちゃんが写真見て言ってた」
「ふぅん……なんかトゲトゲしてるけど、やらかい感じ」
植物には特に興味が無い暁だが、その生け垣がふわりと優しく屋敷を守っているような印象を抱いた。
「ってか、お前すげえな。カガセオの力とか目覚めてもいねークセに、あんなシールド張れるなんて」
「え?」
「んだから、さっきのピンクの!」
「あのピンクいヤツって、奥田さんが張ってくれたんじゃないんすか?」
「いんや」
「え~!?」
男二人は、狭いような広いようなワゴン車内の後部シートで頭を抱え込んだ。
黒猫も小首を傾げている。
「んだってよ、あんな技使えりゃよ、オレらはこんなケガなんかしねえっつの。邪気とかの攻撃にはシールド張れるけど、あれはムリ」
「俺だってムリっす」
大げさに肩をすくめて見せる暁の膝を、黒猫が前足でぽふぽふと叩く。
「あ、希沙夜がやったんすよ。たぶん」
「んにゃ!」
『ちがう!ぼくじゃない』とテキストウィンドウに書かれていた。
「じゃ、誰があんな強力なシールド……」
首をひねりながらまた外を覗けば、白い子猫がふらふらと雪原邸の門を目指し歩いていくのが見える。
「おいっ!あの猫やべーぞ!」
「俺っ、出ます!」
言いながら、手近に脱ぎ捨てられていた革のコートを被って暁は走り出ようとした。
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