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しかし、今木の前にはそのお父さんがいるのだ。
病死だった。
余りに急に亡くなったから、葬儀に参加した参列者の殆どは、彼の死を飲み込めていなかった。
お葬式も告別式も終わった頃、ようやく家族は少しずつ彼の不在を理解し始めた。
家族が悲しんでいる中、お父さんは天国に行けずオロオロしていた。
『死んでないよ。此処にいるよ』
お父さんは家族の間を飛び回ったけど、皆には見えていなかった。
彼には幼い息子と娘、妻がいた。
小さな娘は、【死】が理解できず、お父さんは何処へ行ったのかと毎日泣いていた。
息子は何となくお父さんはもう帰って来ないと分かっているようだった。
母親は悲しみの中でも二人を守っていかなければならなかった。
強い母だったが、二人が居なくなると一人泣いていた。
お父さんはそんな家族を見るのが辛く、置いていけないと言った。
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