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その年、産まれたばかりのトンボがいた。いつもお母さんの後にくっついて、物珍しそうに飛んでいた。
ある日街を飛んだとき、小さなトンボはある家の換気扇から家の中へ迷い込んでしまった。
人間は外出中。お母さんは直ぐに出てきなさいと言ったけど、小さなトンボは人間の家が珍しかったんだろう。家の中を飛び回ってなかなか出てはこない。
するとしばらくして人間が帰ってきた。人間は換気扇のスイッチを入れてしまい、小さなトンボは外へ出られなくなってしまった。
小さなトンボは慌てて外へ出ようとしたけど、回る換気扇の中になんて入ったら死んでしまう。
小さなトンボは泣きながらお母さんを呼んだ。
お母さんトンボも困って換気扇に近づいたり離れたり飛び回ったりしていたけど、しばらくして決心し、換気扇の中に飛び込んだ。
一瞬だったけど換気扇は止まり、小さなトンボは外に飛び出した。
けどお母さんは換気扇の中で死んでしまっていた。
小さなトンボは泣きながら換気扇の側を行ったり来たりした。
しかしお母さんがもどることは無く、じきに震えながら、何度も後ろを振り返りつつ、飛び去って行った。
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