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コンクリート沿いの紅葉を巻き上げてヒューッと吹く秋風が一人の生徒へと。
「寒っ」
十月の下旬の風にしてはやけに冷たい。今年は秋の訪れが例年に比べて早かったらしい。
登校中にあるこの並木道の木々達も赤に黄色にと、まるで競争をしているかのように表情を変えていく。
家から出てまだ少しというのに愁(しゅう)はこのひんやりとした空気に耐え難い様子だ。
暖かみをもらえるのはこの景色とポケットの中にあるカイロの小さな温もりだけである。
コツコツっと道を歩く度に響く足音のリズムと寒さが愁を学校へと急がせる。
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