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姉と二人きり。
夕食を食べ終え、そろそろ寝支度を。という頃の出来事だった。
年季が入り、建て付けが悪くなっていた木戸が、割れ飛ぶのではないのかという勢いで外に引き開けられ、村の定例の集まりに出掛けていたはずの父親が血相を変えて飛び込んできた。
息を乱し動揺する様子の父親の言葉はとても聞き取りにくく、幼い少女には要領を得なかった。が、とにかく尋常では無い事態が起こっている事だけは何となく理解出来た。
制止を振り切り父親が再び外へ走り去ると、姉は玄関に鍵をかけ、幼い少女を抱き締めた。
彼女の肩越しに見る窓は、夜だというのに赤やオレンジに明々とゆらぎ染まっていた。
地鳴り。轟音と、悲鳴と、怒号と。
家の中にいても耳が痛くなるような酷い音の嵐。
背中に回した腕を痛い程締めてくる姉は、震えていた。
どれくらいそうしていただろう。
扉の隙間から煙が染み出している事に気が付き、少女が悲鳴をあげると姉は「地下に隠れましょう」と言ってきた。
二人で力を合わせ、床板を上げ。貯蔵庫の重い石の蓋を何とか開け、中を覗いて。
――その時、隣にしゃがむ姉が見せた表情が、忘れられない。
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