†序章†

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  「――真珠。貴方が入りなさい」    十歳歳上の姉は、烏(からす)の濡れ羽根のごとく艶やかで長い黒髪が自慢だった。  咲き初めの桜の花に似た、澄んだ瞳をしていた。    砂糖漬けの壷の隙間に少女を押し込むと、 「じっとしているのよ」  微笑んで、独りで石の蓋を外から閉めた。    まだ、十六歳だった。   * * *
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