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瞼を開けているのか、閉じているのか。それすらも判然としない暗闇の中。幼い少女は独り、膨らみの無い平らな胸に膝を力一杯押し付け、そこに顔を埋め。息を吸っては吐くという行為に全神経を集中させる。
耳を塞ぎ。
心を閉ざし。
ただただ闇が、自分の存在を消し去ってくれる事だけを、想って――。
黒の元年。二月四日。
地図にも載らぬ名もなき小さな村が、一夜にしてこの世から永遠に失われた。
誰に語られる事無く。
幼い少女の奥深くに、存在の傷痕を遺して。
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