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高校に入学してからの私は、希望に満ちていた。 恋愛、バイト、文化祭… 中学生の頃からは想像もできないような自由な生活が始まる嬉しさといったら、厳しい父親の元育った私にはこれ以上なかった。 とはいえ、自分自身が変わったのではない。 忘れてはいけないのは、私のこの神経質さも中学と同時に都合よく卒業した訳ではないという事。 幼稚園児の頃の記憶なんて乏しいから、小中の9年間だけで思い出すと、この人見知り具合に親は大変苦労しただろうなと笑えてくる。 家族やごく親しい友人にはついつい大口たたくんだから、自分でもよほどの内弁慶だと胸を張れる… そんな私が人並み程度に友達もでき、遅ればせながらやっとクラスに馴染んできたのは9月。 『珠美、放課後ひま~?渋矢行こうよ、買い物したぁい!』 『ごめーん、バイトだぁ…しかも今日初出勤だよ彩!!』 文化祭も近くなった夏休み明け、理想も虚しく彼氏もできない私は渋々バイトでも始める事になったのだ。 せっかく親友になれた同じクラスの彩花とも、こうして誘いを断る機会も増えるとなると、お金を稼ぐのも楽じゃないんだなと不安になってくる。
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