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店の真ん前をウロウロしながら頭をかかえていると、ついに板前姿の男性スタッフに声をかけられてしまった。
『もしかしてさ、バイトの西谷さん?』
もう、終わったと思った。
半ば開き直って
『はい、本日からお世話になる予定の西谷珠美です。』
そう言って顔を上げると、男性は意外にも20代後半で、胸元の名札には【店長】とかかれていた。
『だよねぇ、高校生って聞いてたからさ。とりあえず中で着替えてね。』
やっぱり、着替えるんだ…
扉を開けて厨房に入り、奥の休憩室に案内された。
『戸田さん、頼んだからね。』
そう言って店長は再び厨房に戻り、戸田さんという女性と二人きりになった。
彼女はすでにユニフォームに着替えていて、推定30~40代の主婦かと思われる。
『初めてまして、戸田まりなです。バイト初めてなの?あっ、働いてる時は戸田さんって呼ばなきゃだけど、普段はまりなでいいからね♪』
やたら馴々しく、色黒でふくよかな顔に似合わず可愛らしい名前だ。
というか、普段は名前で呼べる訳ないだろう、年も違いすぎる。
親切なのか、お節介なのか、戸田さんはユニフォームの着方から店のスタッフの事から、マシンガントークで教えてくれた。
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