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ひとしきり掃除が終わるとホウキを片付けてぐぐっと伸びをした。
『ふぅ、大体終わったな。そろそろ中に戻るか』
ユウはチラッと店の中を見てみた。
あまり綺麗とは言えない店だ。少し古ぼけた店内には、大学生や部活動の格好をした学生が沢山いる。
この辺りでは一番値段が安い店なので、金の無い学生達はこぞってここを訪れるのだ。
店の前に置いてある汚いテレビは、少し遅いニュース番組を流している。
『昨日の……時頃……市の民家数軒が……倒壊する事件が起こりました……民家は全て細かい砂の様になり……』
電波が悪いのかテレビが壊れているのか、
恐らく後者だろうが、音がかなり悪い。
『ふーん。物騒な事があるもんだな。
……俺ん家まで無くなったりしねえだろな』
青く晴れ渡った空の下で独り言を言った時、1人の男が話しかけてきた。
日系だがオールバックの髪は金色に染められている。
上も下も真っ黒なスーツを着ていて、顔にはサングラス、ネクタイや靴まで黒で統一されていた。
スーツの下の白いワイシャツは汗だくで、いかにも無理矢理着せられているような感じだ。
広めの額には汗がキラキラと光っている。
当たり前だ、真夏の昼近い東京の炎天下をなめてはいけない。何せ今年は最高気温が前年より二度も上回り、熱中症で倒れた人もかなりの数になっているらしい。
にもかかわらずわざわざ怪しい格好をして目立っているこの男、一体何者だろうか。
ユウは怪訝そうな顔をして
(オイオイ、あぶなそーな奴だなぁ。見た目が完璧マフィアなんですけど……)
しかしこの位でたじろぐユウではなかった。
コイツの見た目がマフィアなら、おやっさんの外見はヤクザみたいなモノだ。
しかも、トメさんの話によると、おやっさんは昔は多種の武道に精通し、人間離れした強さを持っていたというのだ。
ヒョロい体つきをしているコイツよりは遙かに質が悪い。
ユウはすぐさま営業スマイルに切り替え、話を聞いてみた。
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