第二章~日常×非日常~

4/7
前へ
/251ページ
次へ
『この女性を知らないか?』 マフィア(風の男)は単刀直入に言い、一枚の写真を見せる。 そこには黒の袖無しタートルネックを着た少女が写っていた。 瞳は漆黒で、腰ほどまである黒髪は無造作に束ねてある。 写真は腰上までしか写っていないので分からないが、全体としてはカメラに背を向けて走っている感じだ。 何かの記念写真にしては顔が少しも笑っていない上、体は詰めの甘いCGで修正されているようにも見える。 なんて怪しい写真を見せてくるんだろう。 コイツは馬鹿なのか? 『随分とかわいー女性ですね。家出少女かなんかですか?』 呑気に写真に対して感想を言うと、【マフィア風】は知らないのならいい、と言ってさっさと他の人の所へ行こうとした。 その時、ぶわっと埃が飛び散った。マフィア風が丁度進行方向にあったちりとりを踏んづけたのだ。 『わわっ!?ス、スイマセン!!』 ユウは焦って素早くスーツに付いた埃を払い落としていく。 マフィア風は焦ったように、 『もういいから触るな!!』 とユウの手を払いのけて足早に去っていき、行き交う人々に写真を見せながら同じ質問を繰り返していく。 周りをよく見ると何人もの男達が同じ事をしていた。 ユウはもう一度伸びをした後、早歩きで店内の厨房へ向かった。 『オォ、どうだった?』 厨房ではおやっさんが調理器具を片付けていた。 余ってしまった味噌汁の匂いが厨房内にたちこめている。image=247471372.jpg
/251ページ

最初のコメントを投稿しよう!

159人が本棚に入れています
本棚に追加