一話

5/5
前へ
/135ページ
次へ
「いつ見ても変わらないな、その美しさ」 鬣を撫でると光麒は目を細めて気持ちよさそうな表情になった。 「さあ、次はテンリ様の番でごさいますよ」 光麒がそう言うとテンリは名残惜しそうに撫でるのを止める。 そして数歩下がり光麒と同じように目を閉じる。 ブァッと強風が吹き一瞬にしてテンリは竜の姿へと変化していた。 その姿は白銀の鱗に被われて日の光に反射し、真っ赤な瞳を際立たせていた。 光麒は自分より何倍もの大きさのテンリを見上げる。 「貴方もお変わりありませんね。出逢った頃のままの美しさです」 「そうそう変わるものか。さあ光麒、行くぞ」 テンリは翼をはためかせ空へと向かった。 光麒はテンリを追った。 この日、白銀の竜と金色の麒麟が金粉を撒きながら空を駆けていたそうだ。
/135ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2413人が本棚に入れています
本棚に追加