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第2章 「生き死」
昭和54年。6月28日。
一人の命が救われた。
そのお話を今からしよう。
徳川敏正(仮名)は5歳。
この子は、拡張型心筋症という病気だった。
この病気は、原因不明で心臓内膜が通常より大きくなってしまう病気で、心臓の働きが弱り、心不全、場合によっては死にいたることもある。子供の場合、ほとんどが、助からない。
今でこそ、薬による治療もあるが、この頃は、心臓移植しかなかった。
しかし、この頃はまだ、日本では心臓移植は認められていなかった。
この子の家庭は貧しく、たったひとつ残された海外での移植もできない。
つまり、この子は奇跡がおこらないかぎり、助からない。
奇跡がおこらないかぎり・・・。
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