第2章 「生き死」

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その医者は、前川哲郎(仮名)。 いまは、モグリの医者をしているそうだ。訳があって病院に行けない人などを、こっそり、治療しているのだ。まれに、手術もする。しかし、心臓移植となると意味がちがう。 金額よりも、その心臓が必要なのだ。生きている心臓が。 父は言った。 「俺の心臓を使ってくれ」と。 父親として、子供を助けたい気持ちはわかるが、医者もそれはできないと断った。 と、その時だった。 「おぃ、助けてくれ!」 そこには、銃で撃たれた暴力団らしき人が2人入ってきた。 「頼むから、こいつを助けてくれ。小さい頃からのダチなんだ。頼むよ」 医者は、その撃たれた暴力団員の手術をはじめた。が、すでに息はなかった。脳が死んでいた。 しかし、この医者は手術をやめなかった。そして、敏正の父親に、 「すぐに、子供を連れてきなさい。早く急いで!」 「は、はい」 父親は息子を迎えに急いで帰った。 医者は、残された暴力団員に、撃たれた男が死んだ事を告げ、その心臓を別の人間に移植することを容認させた。 そして子供が来て3時間の手術がはじまった。 そして奇跡は起こり、子供の命は救われた。
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