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ることが多い。桐子が幹雄ではなく、みーくんと呼んでいるのもそのためである。
栄羽学園では高等部からエスカレーター式に大学に入る生徒が多いため、大学のサークルも高等部の部活も同じと見なされている。それでこうして大学生に混じってサークル長屋に通う物好きもいるのだった。
幹雄はこの学園とは幼稚舎からの付き合いだという。つまりは桐子と同じくブルジョワジーであった。
「お前、なんでまたこんな犯罪心理学研究会なんてサークルに入ったんだ?」
以前、桐子が席を外しているときに友也が副部長らしからぬ質問をぶつけた時のことだった。
「ぼくには歳の離れた兄がいて、その兄が春巻島分署の刑事なんですよ。たぶんその影響ですね」
「へーっ、何だかそういうのってかっこいいよな」
「いやあ、現実は厳しいもんですよ。うちの兄、どうみても刑事には見えませんから」
と幹雄は腕を組んでしみじみと語った。
彼を含めた三人が犯罪心理学研究会のフルメンバーである。その部室でもあるこの部屋は四畳半ほどの広さがあり、テーブル、四人掛けのソファー、本棚、でスペースは全て埋まっていた。本棚の中段には映研から貰ったテレビが据え付けられており、その下に丁度ビデオ一台分のスペースが空けられていた。
「――で、これから何するー」
と桐子は先ほどと同じセリフを呟いた。足を組み両腕を背もたれの後ろに垂らした彼女はくすんだ光を放つ蛍光灯を見上げた。そばに突っ立っていた友也と幹雄も桐子を挟むようにソファーに腰掛けた。何か建設的なことを提案しようとするが二人ともひらめくものがなかった。
「はぁーあ。退屈よねー」
「ゲーム機でも持ち込みますか」と友也。
「わたしゲームやんないけど」
「ぼくもあんまり……」
桐子は素っ気なく、幹雄は申し訳なさそうに答えた。
「そういえばオレもやんね」
桐子はもう一度ため息をつくと天井を見上げたまま口を利いた。
「物騒な世の中になったって言うけど大したことはないわね」
「そんなことはないんじゃないですか?うちの兄は例の〈スタンガン連続殺人事件〉にかかりっきりで会うたびに死にそうな顔してましたもん」
と幹雄は桐子に言った。
彼の言う〈スタンガン連続殺人事件〉とは、今年の二、三、四月のほぼ同一日に若い女性がスタンガンで無抵抗状態にされたうえ、
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