第一章

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と理科室の片隅でやり取りを聞いていた教師に声をかけた。「それでは白井先生、顧問として一言お願いします」 「あー、少し冷えるかもしれんから何か羽織るもんでも持ってきた方がいいぞ」  始まってわずか五分で会議は終わった。  友也は中学二年の時点で中野沢中学科学部の部長だった。三年がおらず、二年も自分一人だけ。一年は四、五人いるがまともに顔を出しているのはほんのわずかだった。  この会議は毎年夏休み明けに行われる文化発表会で展示する出し物を決めるために開かれた。その発表会に参加することが文化部としての唯一かつ最大のイベントなのだった。しかし、天体観測というポピュラーなものに決まった理由はただ一つ――楽だから。  夜に集まって月や星なんかの写真を撮って、それにどっかから引用してきた説明文をつけて、はい終わり――これが友也のもくろみだった。  だいたいこんな事に貴重な夏休みを費やすわけがないよな。  実際に夜に集まるのだって明日を入れて三回だけの予定。それも多くて。  次の日、土曜の夜の一〇時過ぎ。中学校の屋上に出るドアから科学部顧問の白井が現れた。 「おー、集まっとるのー」 「……先生、皮肉はやめて下さい」  友也は科学部部長としてため息をついた。屋上に集まっているのは彼と一年下の中谷一実の二人だけだったのだ。 「まあ二人いれば大丈夫だろ」 「はあ……」そーいうもんですかね。  と友也は思った。 「あ、それからワシは宿直だから職員室にいるんで。あとよろしくな」 「わかりました」  友也は白井が付ききりにならないのがわかると多少気が楽になった。 「これが理科準備室のカギ。天体望遠鏡とカメラはそこにある。壊すなよ」  と白井は友也の手にカギを置いて下に降りていった。 「仕方ありませんよ部長、とにかく機材を運んじゃいましょう」  中谷一実のその言葉で、友也はやれやれといった風にして準備室へと向かった。  一〇分後、再び屋上。二人掛かりで天体望遠鏡とカメラを運んできた。天体望遠鏡と言うと聞こえはいいが所詮は学校の備品だ。双眼鏡よりはよく見えるといった程度の代物だった。  それを屋上のど真ん中に置くと、早速、一実が覗き始めていた。  幽霊部員が多い科学部一年生の中で彼は友也以外で唯一真面目な部員だった。  人前では無口な方の友也だ
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