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が、一実とはほぼ毎日顔を会わせているので割と心を開いていた。そしてそれは一実の人なつこい性格に依る部分も大きかった。
「どうだ、一実、何か見えるか?」
「結構はっきり見えますよ」
と言って一実は友也に替わった。
天体望遠鏡を手に取り、頭上の月に向けた。レンズいっぱいに月が広がり、青白く光を放っていた。
満月だ。
そのせいか辺りは何となく明るかった。
再び一実に替わり、彼は一眼レフのカメラを取り付け撮影を始めた。
それから三〇分が過ぎた。月と、夏の代表的な星座を何枚か撮り終わると、二人にはすでにすることが無くなった。
「部長、次は何を……」
「さあー、何かやる気なくなっちまったな」
三〇分も集中力が保たなかった友也は屋上の手すりにもたれかかっていた。そんな彼に一実は一つの思い付きを口にした。
「だったらあれやりませんか?北極星にカメラを向けて露出時間を長くすると……」
「……円が書けるやつか」
と友也は一実の言葉を続けた。
「それです。いいアイデアでしょう?」
「……でもよ、このカメラでそんな高尚な技が使えるか?」
友也は科学部に代々伝わる〈辛うじて一眼レフ〉に目をやった。
「うーん、ちょっと古すぎですね……」
一実も同じように眺めた。
ばつの悪そうな顔をしている一実に友也は苦笑しながら言った。
「はい残念。この案は却下されました。罰としてコンビニ行って、ウーロン茶買ってきなさい」
「ええーっ!パシリですかぁ?」
とさらに顔をゆがませる一実。
「いーや、パシリじゃなくてオゴリだとしたら?」
「そういうことなら話は別です」
一実の顔にほころびが生まれた。
友也から小銭を受け取ると、彼はさっそく近くのコンビニへ向かった。
友也は「先生に見つからないようにな」と一言付け加えるのを忘れなかった。
コンビニはここから五分ぐらいの所にある。一実が行ってしまうと、友也は屋上の手すりに手をかけて夜の町を見下ろした。この中学校は町外れにあったので街の明かりがずいぶん遠くに感じられた。
右手には道を一本挟んでうっそうと茂った林があり、その林は一段高くなっている高台の下まで続いていた。しかし、高台といっても校舎より少し高いくらいで屋上からは良くその高台が見えた。
友也はあくびをしながらこれから
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