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あれはひょっとして……音羽……か?
間違いなかった。そこには友也の知った顔があったのだ。
音羽のヤツ、こんな時間に林ん中で何してんだろ……。
音羽涼。彼もこの中学の二年、すなわち友也とは同級生でクラスも同じだった。
クラスの人間の名前を半分も覚えていない友也だったが、音羽は別だった。彼は転校生だったからだ。とかく転校生という人種はよく目立つ。それがいわく付きならなおさらだ。音羽は去年、この中学にやってきた。ちょうど例の高台の上に彼の家がある。その家は一見大きなログハウス風の造りをしている。自然回帰運動とでも言うのか、彼の家族は近くに畑を借りそこで自給自足の生活を送っている。さらにこの運動の信奉者か信者かが数人、音羽の家族と共同生活をおくっていた。しかし、音羽涼とその妹は義務教育ということもあってか、そのログハウスから少し離れた小屋で暮らしていた。
こうしてみると何だか胡散臭い宗教団体か何かと誤解されそうだが、実際は彼らが俗世間と接触を断って暮らしているというわけではなく、ごくごく普通の農家の生活と変わらない生活をしている。また何人かは街で働いているようでもあった。
そして今日この夜、天体望遠鏡のレンズの中に音羽涼が現れたのだった。
どう見ても夜の散歩っていう風には見えないな。どっちかって言うとなんかの儀式みたいな感じが……。
友也が彼らの様子をいぶかしんでいると、レンズの中で動きがあった。音羽と数人の男女は一人を残して火の周りに座った。どうやらその男がリーダーらしく一団に何事か話しかけている。その中で音羽はずっと下を向いて話を聞いているのを友也は見て取った。その手がかすかにふるえているのは炎の揺らめきのせいだったろうか……。
それから程なくしてリーダー格の男の指示なのか、音羽を除いた全員が動き始めた。
彼らの一人が持っていた袋から何やら取り出した。それは周りの闇に溶けるような真っ黒の猫だった。黒猫はぴくりとも動かぬまま高々と持ち上げられた。
そして男は傍らの女から手渡された大きなナイフで素早くその黒猫の首をはねた。
「うげっ、何だこいつら……」
突然の出来事に友也は無意識にうめき声をあげていた。友也は黒猫の首が胴体から離れた瞬間、断末魔の叫び声を聞いたような気がした。
首の皮一枚でぶら下がっている頭部を引きちぎ
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