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「はぁぁ・・・。」
決して、オヤジが言ってた事を忘れたわけではない。
放尿の快感が、気を緩ませたのだろう。いつものクセが、出てしまった。
Uには、放尿中「はぁぁ」と息を吐きながら、うっとりと見上げてしまうクセがあった。
便器から目を離した事に気付き、「あっ、しまった!」と思ったその時。
まどろむ瞳に何かが、映った。
青白いモノ。
女の顔?
Uは、「管理所のオヤジが、驚かせる為に、天井にお面を貼り付けたのか??」と思った。
が、その時、青白い“女の顔”の閉じていた目蓋は開き、ニタニタと笑った。
「あが、あが」
悲鳴をあげたい、なのに口は開いても、悲鳴が喉に詰まり口から外に出てこない。
尿が止まらない! でもジャージを上げなきゃ! そして逃げなきゃ!
右手はジャージを持ち、左手は引き戸にかけた。
「今だ、逃げろ!」と思った矢先、Uの見開いた目と青白い“女の顔”の白内障のような濁った灰色の瞳と目が合ってしまった。
「あっ」
0コンマ何秒の空白。
いきなり、青白い“女の顔”が、ところてんを押し出すように、どぅるぅんと垂れ落ちてきた。
Uの視界を青白い“女の顔”が塞ぐ。
Uの喉を塞いでいた悲鳴は、固形物のように吐き出され、左手は渾身の力で引き戸を開いた。
「あがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
Uは、獣のような悲鳴を上げながら便所から勢いよく飛び出した。
しかし、ジャージとパンツが膝の動きを封じ足が前に出ない。
Uは、そのまま高台を転げ落ちた。
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