出る便所

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朝、管理所のオヤジにUは起こされた。 起きたUは、下半身丸出し、ジャージはびしょ濡れ、そして共同便所から5mほど離れた所で倒れていた。 Uは、慌ててジャージを穿くと、オヤジは笑いながら、 「あーあ、あんだけ念を押したのに。  あんた、見ちまったんだろ?」 Uは、がくがくと頭を縦に振り、 「あ・・あ・・あぁ、み・・見た!」 と答えた。 「そーか。  まー安心しろ。  俺も何回か見てるけど、その後、呪われたり恐い思いはしてねーからさ。」 とオヤジは言うと、手を差し伸べ、Uを起こし上げた。 立ち上がったると、体中打ち身や擦りキズが出来ているのか、ズキズキと痛んだ。 Uは、オヤジに、 「あれは何だ?」 と聞くと、オヤジは、 「知らね。  何年か前から、いるんだよ。  迷惑だから、お前さんが持って帰ってくれると、良いんだがね。」 と、洒落にならない事を笑って言った。 以上が、知人Uの体験談です。 Uは、この話を私にした後、ぼそりと呟いた。 「この話を聞いて、お前が持って帰ってくれると、良いんだがね。」
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