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「ふーやれやれ…。やっと一息つけたわい。」
温かい茶が入った湯呑みを机に置き、ホッと溜め息をつく馬景。
「そうですなぁ。こういう時は茶が一層旨う感じまする。」
袁涯は茶の香りを楽しみながら言った。
「はっは、わしらもそう感じる歳になってしまったか。」
「ですな。
私が殿に仕えて十年が経ち、御子息たちも大きく成長されましたな。」
費筆は茶を口に含み、しみじみと言った。
同期の楊諮も「その通り。」と同調するように頷いた。
「ここに来られた時の馬振様はまだまだわしの腰あたりの背丈でした。
しかし今ではすっかり抜かれてしまい、見下ろされる格好となりました。」
楊諮は茶を一気に飲み干し熱く語る。
「わしは馬振様に馬桜様、馬豊様、馬理様、そして馬発様もご立派になられました事が、我が子のように嬉しく思うのです。」
何故か涙ぐんでいる。
費筆は「大袈裟な奴だ…」と遠い目をする。
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