四十路たちの日常

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「あぁ…まったく、兄より先に逝きおって……。」 馬景も同じように空を見上げた。 その目はとても悲しそうであった。 「亡くなられたのは、今のように暖かい春でしたね…。」 「あぁ。 脩の奴、人手不足を気遣い病を押して戦に出おって……帰って来た途端死んでしもうたわ…。」 馬景の声は震えていた。 十年経った今でも、弟の事を思い出すのは辛い。 馬景は知より勇に優れ、馬脩はその逆だった。 兄と弟がお互いの足りない部分を補い合い、いつも試練に打ち勝ってきた。 その弟が死んだ時の馬景の悲しみは計り知れなかった。 そんな馬景を気遣ってか、費筆が慰めるような言葉をかける。 「殿。 私はあの方の最期は、あの方の本望だったと思いまする。」 「? 何故だ?」 「あの方が亡くなられた時のお顔はとても満足そうでした。 将として最後まで戦場に立ち、一人の人間…いや、親として馬発様のために生きて帰って来られて…。 今となっては本当の事は分かりませぬ。しかし、私はあれがあの方らしい最期だったと思います。」
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