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(大きな古い建物?
こんなとこに、そんな建物、あったかな?)
この山には、何度もきたけど、
やっぱり、古い大きな建物なんて、なかったはず。
急に、強い風が吹いて
テーブルに置いた帽子が、地面に落ちた。
美夏は、ブルッっと身震いして、辺りを見回した。
今日はよく晴れている。
本当にいい天気。
こんな日に、幽霊話しなんて似合わない。
腕時計に目を落とすと
11時30分…
そろそろ、頂上から降りてくる客がいるはずだ。
集合時間にルーズな客がいると思えば、
やたら心配性で、
時間より30分も40分も、早めに戻ってくる客もいる。
限られている短い自由時間を、もう少し有効に使えばいいのに…
早く戻ってくる客ほど
手がかかる。
この後はどうするんだ?
もう一度、お手洗いに行った方がいいだろうか?
子供じゃないんだから、少しは、自分で考えて欲しいと、
なんど言葉を飲み込んだ事か…
美夏はジャケットを羽織り、リフト乗り場へ足を早めた。
『いたいた!
添乗員さ~~~ん』
ほら又だ…
うるさい客が、手ぐすね引いて私を待っている。
美夏は、心の中でため息をついてから、
笑顔で客に手をふった。
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