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秋子は電車を降りた後も 考え続けていた
[私、あの病院に入院していたの
その間に子供達は、行方不明になって…]
別れ際に晶子が言った言葉が耳に残る…
偶然にしては出来すぎた話しだ
いや、今日こうして
晶子と話した事
晶子がいる、料理教室に通い始めた事すら
ひょっとしたら、偶然ではなかったのかもしれない
2ヶ月前に会ったあの子供達が、ママに逢いたいという強い思いで
秋子に晶子を巡り合わせたような気さえする
あの子たちが、晶子の子供だという確証は何もない
馬鹿げた発想かもしれない
けれど、父の友人が話していた患者の話し
あの時父が話した子供達の事
全てが重なったような気がしてならない
何もかも秋子の勝手な想像にしかすぎない。
それでも秋子は、晶子をあの病院に連れて行かなければいけない気がした
今は11月
夜になるとかなり冷え込む。
冷たい夜風が秋子の頬にささる
秋子はバックの中から、マフラーを取り出し、首にぐるぐると巻き付けた。
駅を降りて2.3分も歩くと
簡素な住宅街になる。
街灯の明かりと、月明かりを頼りに秋子は歩く
歩き慣れた道だが
やはり夜の一人歩きは怖い
ふと…
背後に気配を感じて秋子は
足を止めた
耳をすましたが
振り返る勇気もなく
秋子は少し足を早める
秋子を追い抜くように
バタバタと走る足音が聞こえた…
同時に
(頑張れ!けんちゃん
泣いちゃダメ!!頑張れ…)
街灯のあたりから女の子の声がした
押し殺したような小さな声
(寒いよ…)
もう一度声がする…
今度は男の子の泣きそうな声だ
足がすくんで、
もう一度秋子は立ち止まった
【ガチャン!!】
けたたましい音とともに、今度は秋子のすぐ横の電灯が割れた
秋子は確信した
晶子はこの子達の母親なんだと
秋子は
そっとつぶやいた
(待っててね…
きっと行くから…
お母さんに必ず会わせてあげるからね…)
不思議と怖くはなかった
秋子は心の中で、二人に声をかけ、また歩き始めた…
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