7/10
前へ
/139ページ
次へ
料理教室の仕事は楽しかった 毎回テーマを決めて 新しいメニューを考えるのには頭を悩ませたが 何度もオーナーの自宅に足を運びアドバイスをもらう それも晶子とオーナーの楽しみの一つになっていた 給料も晶子が恐縮してしまうような額で 生活にも余裕が出来た 週三度の教室に合わせ食材を買い揃えたり、 慣れないパソコンでレシピを書いたパンフレットを作ったり 忙しい毎日だったが 新しい仕事に晶子は夢中で取り組んでいた 夢中で過ごしてきた五年… ようやく今の仕事も起動にのり 時間の余裕も作れるようになった 思えばこの二十年間 たくさんの人に たくさんの優しい気持ちをもらったと思う 自分はそんな資格などないのに… 今こうして 生きている事すら、子供達に恥ずかしい ふと… 窓を見ると空から白い雪が降っていた 晶子はぶるっと体を震わせて こたつのスイッチを入れた 立ち上がって部屋の電気をつけた テレビの横の子供達の写真を手にとって こたつにもう一度潜り込んだ
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!

647人が本棚に入れています
本棚に追加