1713人が本棚に入れています
本棚に追加
/645ページ
「……なっ……!?」
思考が追い付かないフィーネを尻目に、一拍置いた兵士達が大笑いを響かせる。何から何まで意味がわからなかったが、ひとつ言えるのは、
「もっ! もう、尖兵とか、大っ嫌いだっ!!」
男共の喧騒に紛れ、真っ赤な顔で叫んだフィーネだった。
だが、次の瞬間、である。
「おい危ねぇ!!」
笑い声を切り裂いたのは、シロウの叫び声だった。
フィーネの視界が一瞬にして紅に染まり、体に衝撃が走る。響く爆発音と共に脳随が激しく揺れ、暗転しかける意識を気力だけで何とか繋ぎ止める。
眩む頭を持ち上げ、目を開ける。石畳に倒れた体の上に、シロウが覆い被さっていた。鼻をくすぐる少年の香りを意識の外に追いやってから、その盲縞の肩越しに状況を確認する。
さっきまで立っていた辺り一面が、溶岩と化していた。飛び散った紅色が雨のごとく降り注ぐ中、シロウと同じく咄嗟に難を逃れた兵士が数名、その回りに倒れ込んでいる。何が起きたかは、言うまでも無い。
「……っ、だから、言わんこっちゃ無い!!」
絞り出すような声音で独り言ち、
「シロウ!! 生きてる!?」
覆い被さる少年の肩を揺さぶる。
「あぁ、どうにか……。くそ、痛ってぇー……」
シロウが頭を押さえながら、上体を起こした。彼が気付いて庇ってくれなければ、フィーネは今頃あのマグマの中である。骨盤から登ってくる戦慄を圧し殺して、シロウの下から這い出る。
「体勢を立て直す! いったん退くよ!」
向かいの家屋の上から、巨大な筐体が砲身をぶら下げていた。その非道な巨大兵器をきっと睨み、最大限の神経を研ぎ澄ませる。そこへ、
「がっはっは……! これは、やられたなぁ!!」
こんな状況ではもはや能天気と言える笑い声が響いた。見ると、立ち上がった小隊長が辺りの惨状を眺め回し、
「おい起きろ! 半分は死んだぞ、誰が生き残ってる!?」
すると、よろよろと立ち上がった兵士達が、次々と自らの名前をアナウンスした。
「マカフィー!」
「マルニ!」
他、計8名。そこに、先ほどフィーネへ求婚した兵士の姿は無かった。
「おい、グレースは?」
「あのロリコン、本当に死にやがった……!」
最初のコメントを投稿しよう!