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そして、彼等の眼光はどういうわけか爛々と輝きはじめたものだ。それは、フィーネの予想を大きく裏切る反応だった。
「おいお前ら、わかってんだろうな……!?」
髭面の小隊長が厳めしい顔つきで、ゴツンとメイスを石畳に叩き付ける。
「これだけやられておめおめと引き下がるなんてのは、本部の腰抜け連中のする事だ!!」
おう、そうだ、と、周囲から同意の声が上がる。
「あのデカイだけの下品な黒ゴキブリに、一泡吹かせてやらなきゃ収まらねぇ! 違うか!?」
「オオォォー!!」
ビリビリと、尖兵達の溢れる闘志が空気を震わせた。平和ボケなど、とんでもない。味方の半分が殺されてなお、折れるどころか鰻登りとなる彼等の士気に、不覚にもフィーネは気圧されそうになった。しかし、
「む、無謀だ、小隊長! この人数であれを引き付けるなんて……!!」
先刻の小隊長の目算は正しい。あの兵器を引き付けるには、優秀な尖兵20名は必要である。しかし、
「がっはっは……。そんな事言ったって嬢ちゃん、お仲間の方は既に、やる気満々みたいだぞ?」
「え……?」
振り返ると、立ち上がったシロウの瞳にもまた、爛々と瞳を輝かせ、不敵な笑みを浮かべていた。
「おうよ、燃えるぜ、こういうの。おいおっちゃん、もっかい勝負だ! 今度こそ俺が勝つ!!」
「がっはっは! 10年早いわ坊主ぅ!!」
「キミ達、こんな時に何を言って……!!」
妙に波長が噛み合ってしまう2人を前に、フィーネは言葉を詰まらせた。もうフィーネ1人が何を言っても無駄な空気が、微熱のように辺りを揺らしていた。
「嬢ちゃん。あんたぁ優秀な傭兵だが、ひとつ、わかって無ぇ事がある」
小隊長が髭面を撫でながら、にんまりと笑う。
「前線の戦いにおいて一番重要なのは、何か。状況把握? 練り込まれた戦略? そんなのは、作戦室に引き込もってやがる参謀共に任せておきゃあ良い。こういう土壇場で一番大事なのは、な……」
ちらりと、フィーネの後ろへ視線を送る。つかつかと前に出たシロウが、その続きを引き継いだ。
「おう。ノリとテンションだ!!」
「なっ……!?」
驚きと呆れで声を失うフィーネを捨て置き、
「行くぞ、お前ら!!」
尖兵達は雄叫びと共に、標的をまた変えたらしい巨大キラーボックス目掛けて走り去ってしまう。
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