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「さぁさぁ、グレースの弔い合戦と行こうや」
「ひとつ気になるんだけどよ、俺ら明日から隊長に何て呼ばれんだ?」
「ん? 3馬鹿がひとり欠けたから、2馬鹿? おい、語呂が悪ぃぞ」
「じゃあ俺かお前、生き残った方が『大馬鹿』でどうだ」
「だはは、いいじゃんそれ! 俺らも勝負と洒落こむか!!」
無駄口を叩くくせに、走り去る様から一片の油断も感じられない。詰所にいる時よりも一層生き生きと、面白い玩具でも見つけた子供のような、命のやり取りに餓えた中毒者のような彼等の後に、上着の裾を靡かせてシロウも続く。
「もう、どうなっても知らないから……!!」
フィーネは諦めて、再びパーカーの魔石とシンクロを図った。
一方で、ケントはというと……。
ウェスト・ロンディアの南端、海岸沿いの港へと足を運んでいた。街中の凄惨な戦闘が何処か遠い世界で起こっているようにさえ感じられるほど、水面は波ひとつ無く静かで、僅かな星々の揺らぎを鏡面のように映していた。
後ろでは赤々と、ウェスト・ロンディアが燃えている。その災禍の中心に立ちはだかる、巨大な黒い影。それは、街に残ったフィーネとシロウが、何とかしてくれる筈である。撤退を始めた『キラーボックス』が凝集して巨大兵器となったことも、敵の本隊が現れたことも、ケントの通信機に連絡が入っていた。だが、『北東の方角およそ2キロの座標』というその出現位置に、また妙な違和感を覚えたのだ。
ケントが本当に嫌な気配を感じでいたのは、その方角では無かった。
「南の方から、何か、良くないものが近づいて来る気がするんです……」
通信に乗じて、ケントはクリスティアーノへそう告げた。
『君の勘の良さには、驚かされるな』
クリスティアーノは目を見開き、呟くように言った。
「どういう事、ですか?」
『本隊が現れた北東の方角には、ジェネシス最西端の要塞がある。連中の本隊が現れるにしては、素直過ぎる。だから念のため、俺が本部に残ってる』
クリスティアーノは少し考えてから、
『ウェスト・ロンディアの南は、海岸だな。本部のある教会からも距離が近いし、うちの索敵網へ引っ掛からずに侵入するにはうってつけかも知れない……。ケント君、見張りを頼めるか?』
「了解しました」
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