第7章 ウェスト・ロンディアの鐘

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  水面を這うように進む、半月形の重力波。完全に不意を突かれた彼等は一瞬の硬直の後、なす術無く圧し潰され弾き飛ばされて向こうの海へと堕ちて行った。だが、魔獣の気配は消えない。次々と飛び出す黒い人影。ケントは素早く大剣を背中のホルダーへ納め、腰に装備したハンドガン『上弦』『下弦』を引き抜く。 潜水艇のカタパルトから射出でもされたのだろう、水面を飛び出した人影は高く高く飛び上がった後、自由落下して砂浜へ着地する。その一瞬、動きが制止する瞬間を狙って、両手に握るトリガーを引く。 鋭く乾いた発砲音が無数に響き、金色の光が幾筋も尾を引いて次々に人影を狙い撃つ。この射撃には、実弾を用いている。銃身に仕込まれた『月のパワーストーン』から魔力を与えられ、弾の内部の魔力回路でエネルギーを集約させた特殊合金の塊は、着弾と同時に強い重力波を周囲に展開し、捕らえた獲物を内部から破壊する。 「がっ……!!」 「ぐあっ!?」 ある者は腸を、ある者は腕を肩口から吹き飛ばされて転倒し、乾いた白砂を自らの血液で染め上げる。 しかし敵も、恐らくは最重要任務に選ばれた精鋭である。迎撃されていると分かるや否や、着地と同時にシールドを張って銃弾を防ぎ、倒れる者の数は激減する。次いで、 「あそこだ!!」 弾道から素早くケントの位置を特定すると、遠距離型の武器を持つ者が反撃へ転じた。 ドドドドド……ッ!! ハンドガンなど比較にならない、自動小銃による実弾、魔力弾の雨。飛び降りた岩はあっという間に無数の大穴を穿たれて崩れ落ちる。武器の出力もかなりのものだ。捕まったらいかにケントとてひとたまりもないだろう。 着地と同時に白砂を蹴り、追撃を避ける。ケントの足下を幾つもの爆音と振動が追随する。そうする間にも、水面から人影が次々と躍り出る。味方が反撃へ転じているという油断を見逃さず、走りつつも新手の着地際へ実弾を撃ち込む。さすがに幾つかは狙いを外したが、それでもまた5、6名の身体を欠損させ、地に沈める。  
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