君の一縷 

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クラスメートだった綾さんは、私の母方の従姉妹で、どうしようもなく内気な私をいつも気にかけてくれていた。 時々連絡をくれていたから、結婚したことも、今では二児のママになっていることも知っている。久しぶりに会っても、笑顔なんか全然変わっていなかったし、少しふっくらしていて、私はぼんやり、幸せなんだろうなぁと思った。   「あらっ、あかんわね、こんなところで立ち話。中、入りましょか。」   「じゃあ、オレこれで…」   「あぁ、秀ちゃんも入ってよ。送り迎えだけやなんて味気ないやん。」   「えー? オレはええよ、同級生違うもん。」   「かたいこと言わんと。学年一個上でも教室は隣やったやん。大丈夫! 秀ちゃんやったら誰も文句言わん!」   「なんやねんそれ」   “しゅうちゃん”が、また笑った。 私は二人の話にしっかり耳を傾けていた。彼が誰だか思い出したかった。
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