君の一縷 

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  ―――― でも、当時私は、なんとなく彼の気持ちが分かるような気はしていた。   そういうのも、私の実家は彼の実家の会社と同じように“なかなか成功していた企業”で、その業績が県の景気を左右するくらいだったのだ。 二大勢力なんて言われて。 それは今でも変わらない二人のバックグラウンドだ。   時々、校舎の裏にあった大きな木の陰で、本を読んだり居眠りをしていた彼を見たことがある。   きっと私と同じような気詰まりを感じていたのだろう。   14歳。漠然とした話をいきなり先輩に持ちかけられるほど、私もまた、ある意味洗練されていなかった。
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