君の一縷 

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「……あ、もしかして、北尾さん?」   脇から呼ばれて少し驚いた。遠慮がちに話しかけてきたのは、名前も思い出せないくらい薄いつき合いだった同級生。   「じゃああぐりちゃん、真弓の結婚式でね。楽しんでいって。」   それから綾さんは、挨拶もそこそこにホスト役に戻り、私はそれなりに時間を過ごした。    帰省の目的の一つは、綾さんの妹の結婚式で、同窓会はあくまでついでの用事だった。   みんな、今でも腫れ物に触るよう……。   それはきっと、私がこの地を離れたきっかけを、みんなが知っているからだろう。  
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