君の一縷 

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その昔、私は心中した。   男女が手に手を取ってする、あの心中だ。   私は今生きているのだから、心中という意味では失敗だったのだけれど、彼は死んでしまった。   仏様になった彼には申し訳ない、でも正直今となっては、本当に彼のことをそこまで激しく愛していたとも思えなかった。   多分、私は寂しかっただけなのだ。   物心ついた頃から内気で、自分から何かを訴えかけることが苦手だった。 学生時代も一緒にお昼ごはんを食べるような友人はいたけれど、親友とよべるようなつきあいは無かった。   内向的な性格の上に、東京からの転校生だったこと、実家が元々地元の旧家だったこと、そんな事があって、成長するにつれて私はますます内にこもるようになってしまった。  
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