君の一縷 

21/86
前へ
/86ページ
次へ
菊川さんは当時三歳年上の大学生で、大手の化繊メーカーである私の実家に出入りしていた縁で知り合った。   堅物な私の父は、朴訥として真面目が服を着て歩いているような彼を気に入っていたようで、一人娘の私が菊川さんとおつき合いをすることになったと話した時だって、少しも反対しなかった。   父も母も、それはそれは後悔をしたことだろう。   二人の交際を許していなければ、あんなスキャンダラスな出来事は避けられたかもしれないのだから。  
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

280人が本棚に入れています
本棚に追加