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その日、私は山奥の廃墟と化した小屋に連れていかれ、頼まれるがまま彼を柱にくくりつけた。
すでに運び込まれてあったポリタンクが二つ。一つずつ、私は床に流した。
いよいよ死の迫るのを実感した時、私はそこまできて初めて、選択を誤ったと感じた。
自分の中の生への執着に気づいて、心の底から「生きたい」と願った。
涙が止まらなかったのは、ガスのせいだけではなかったと思う。
鼻腔を刺すような異臭が充満し始める中、おそるおそる菊川さんを振り返ると、彼はほの暗さの中でうっすらと笑みを浮かべていた。
そして私の目を見て、「もういいよ。ありがとう。」と言っているような気がしたのだ。
私はすぐに小屋をとびだして、もと来た雑木林に向かったけれど、五十メートルも走らないうちに倒れこんでしまった。
激しい嘔気と頭痛、めまいを感じた時には、すでに意識は遠のいていた。
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