君の一縷 

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「こっちへは、すんなり来れたん?」 「ええ、まぁ。連休でもなんでもないし、道も新幹線もガラガラでした」 ケラケラと、彼が笑った。 「そらそうやわなぁ。石川もなんでまたこんな時期に同窓会なんかする気になったんやろ」 そう言ってまた快活に笑う彼の横顔はどこか懐かしかったけれど、気のせいだろうと勝手に思っていた。  少し歩くと構内も行き交う人が減ってきた。 彼はまだ私の手を握っていた。 今さら「放してください」とも言えずに、私は黙って握られたまま歩いた。
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